萌え経済学

2005年12月18日 読書
ISBN:4062130173 単行本 森永 卓郎 講談社 2005/10/30 ¥1,575

読んですぐに書けないと結構忘れるものですトホホイ。

本書は四つの章とプロローグ、エピローグで構成されてます。
プロローグで先ず萌えと経済のベースとなる結び付きを示して、内容に入り込めやすくしています。これだけで大分理解できるようになりますので、「経済というとなんかややこしそうでちょっと…」とか「萌えがなんでこんなに経済的にもウケたか分からん」という方はとにかく読んだ方が良いかと思われます。ま、大抵は表紙がネックになってしまって読みにくいとする方のほうが多いと思われますが。

第一章にてそもそも「萌え」とは何であるか、何故生まれたかがアニメ・漫画側と三次元恋愛の変遷側の視点からそれぞれ紹介されています。ただこのblogでも何度も言ってるように「萌え」はもはや定義が拡がり過ぎて、現実に使われている意味とは必ずしも正確に適合するわけではありません。俺的にはやや狭義的な扱いをされているようにしか見えませんでした。
この章で語られる「萌える人」は要約すると三次元現実世界での恋愛に敗れるというプロセスを経てからモノに対して萌えるようになった、と
いう風に書かれております。この辺りは「電波男」にあるような三次元恋愛論理と同じことを書かれております。
ですが俺はそんな経験は無いのに二次元に萌え滾ってます。何分本書の著者が四十代というのもありまして、見解の違いは世代の違いとしか言いようが無いのかもしれません。様々な萌えキャラの登場するアニメ・漫画の広まっている現代のヲタな若い人は、恋よりも先に萌えを知るのです。と、どこかのblogにありました(台無し)。
間違い無くそういう人がいるので、この時点で一部の理論が成り立たなくなってしまい本書の価値が欠落しちゃったりしますが、まあともかく…
ここにある見解の違いとは、著者が「萌えには性欲が関わらない」とされている点です。残念ながらぶっちゃけあり得ません。本当に性欲が関わらないのであれば先日紹介した漫画みたいな萌エロは成立しませんし、アニメ関連のぇろ同人誌も買うのはDQNばっかりということになってしまいます。違いますよねえ。

第二章は秋葉原にて興っているビジネスの例を挙げてそれが何故成功しているのか、「萌え」の関わる視点から書かれています。普通の萌えヲタには一番気になる章かと思われます。
主にメイド喫茶を取り上げられてます。これもまた先程の定義が使われてまして、飽くまでメイドとご主人という関係を演じるという点で隆盛しているとされています。
…なんつうかですね。萌える人は萌えに全く性欲を求めなかろうが、萌エロが大好きであろうが、その辺りはちゃんと割り切りが出来ているんですよ。
どんな萌えヲタであろうが、メイド喫茶にぇろを求めている奴なんぞいはしません。この辺りがまだメイド喫茶が有名になる以前、当時俺が分からなかったラノベ等において「エマ」などといったメイドものが受けた理由です。
今でこそ割り切ることができるようになったのでメイド喫茶の良さもそれなりには理解できてますが、まだその頃はちょっと分かってませんでしたね。
他にもレンタルショーケースやミリタリー関連等、萌えとはちょっと違うヲタビジネスも紹介されてました。ただミリタリーものと萌えを結び付けているのは少し強引だと思います。

第三章にて経済学的視点からの詳しい分析に入っています。コレクターのための売り方を始めに挙げ、それからモノが売れる要因としてモノの芸術性という点に触れて分析されています。章のタイトルは「アートに萌える豊かな日本へ」とありまして、まあ確かに読み込んでいくとヲタ心理が萌えるモノの芸術性に惚れ込んでいるということは理解できますが…うーむ。
またその観点から消費指向は恋愛心理が大きく関わっているという説にも繋がっています。なにやらこの辺りからは恋愛資本主義を推そうという言葉が見えてきそうです…
そしてマーケティングは悪女に学ぶ点があるとも。確かにそうかも知れませんが、正直俺は気に入りません。ここが俺が今の資本主義を嫌っている要因の一つでもありました。あまり心理的にいじくり回されたくないというのが自分の本音とも思えます。

そして第四章ではネットでの買い物関連の話に移っていきます。ヤフオクや共同購入に言及されています。
これもまたビジネスとして有効なことと失敗例などを挙げられています。

俺は経済の本など今まで他に読んだことが無いので比較対象が無いのですが、総じて本書はしっかりした視点から書かれて「萌え」がどのように経済に関わり、何故ブレイクしたかをしっかりと説明できていると思われます。
ただ萌えるヲタと萌えを好まないヲタの区別が出来てないようで、そのへんの現状をしっかり把握できているかというとまた別の話だったりしました。

最後にエピローグにて女性監禁事件を起こした小林泰剛容疑者を取り上げ、こいつとアキバ系萌えヲタの違いを説明して頂けております。
見てる方には言うまでも無いでしょうが、ヲタは小林泰剛みたいな三次元に手を出すような反社会的行為に及ぶ度胸は無かったり、そもそも他人に迷惑をかけたがらない、自分がされたら嫌なことは他人も嫌だろうとちゃんと理解している奴ばかりなのです。
悲しいかなテレビなどのメディアでは視聴率稼ぎのためにただ面白おかしく、一般人よりも下の立場の人間と思い込ませるような形で洗脳を進めているのでそれが分からない人が増えてたりするのです。現に今の秋葉原ではそういった連中が流入してマナーの悪さや暗黙の了解に対する無知を露呈しています。
そういう人に対して理解して欲しいという意味でも本書を書いた、と仰られてますが…そういう人はこの本をそもそも読まないだろうと思ってしまいました。
そして小林泰剛の事件に対する香山リカ氏の分析の分析でも、「萌え」の定義の綻びからちと補足が必要な部分があったりとかです。問題にする箇所は同じですが、俺の場合は先程の理由から
バーチャルな世界でかき立てられた妄想を現実の世界で実行したい、との欲望を抱く人がまれに現れる可能性も当然、出てくる。
という部分にそれは間違いだという叫びを叩き付けたいと思います。


萌えは純粋な精神の活動と思える俺にとって、それに恋愛に対するのと同じようにカネだカネだと言う余計な寄生をかけるのは正直許し難いものがありましてあまり喜ばしいことでは無いのですが、もはや資本主義社会の中ではどうあっても不可分にするしかないのではとのあきらめも無いわけではないです。
…ま、とにかく市場と萌え文化が関わる仕組みを理解したい方は手にとってみてください。

本日の検索ワード。
:非国民
早速様々なblogで取り上げられているようで。基本的には教諭に対する批判が多いっぽいですが、ただ単に「非国民」呼ばわりしたことに文句を言ってもダメだと思います。
何にしてもこの教諭は説明不足でミスをしたことに違いはありません。

:MIDI TEЯRA
midiには最近めっきり触れる機会が減ってます。SRCが最後でしたか。

…残りは明日に。字数制限がががが。

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