滑り、止マレ。〜都龍駆潰し〜[2]
2005年12月8日 ニ次創作・CW 服に付けているDハザードが反応する。
彬は近寄ってくる鬼が彼だと感じた。例えフルフェイスをかぶってようが、そのぐらいは見分けられる。前回の優勝者…助けねばならない。
周りには誰もいない。一人になって走る彬を狙ってきたようだ。
彼が日本刀を抜いて迫ってくる。だが…CWの面々は常に異空間から武器を取り出す術を心得ていた。
後ろから追い越し様に斬りつけてくる…その瞬間彬が剣を抜く!
ガキン!
最初から刀を狙って振ったために当人へのダメージは無いが、一閃した刀身はあっけなく刀を二つに斬り飛ばした。
参加者が武器を持っているなど考えなかっただろう、彼は予想しない衝撃を受けてバランスを崩しかけている。彬は強引に近付き、蹴りでさらに畳み掛けた。
たまらず横転する彼。彬は単車を止めて下り、倒れている彼に近付いた。
「蓮っていったか、君。こんなことをして何になる」
ヘルメットの中から蓮の視線が彬を射る。
「…………」
「友人の復讐のためなら、もうやめろ。後はぼく達に任せるんだ」
「……く、乗れ……」
聞いているのか聞いていないのか、狙撃をやめさせるつもりらしい。
「『失格』したいのか…」
「心配要らない。狙撃手なら全員倒れている頃だ」
「…!?」
十秒を無意識に数え、それでもどこからも弾が飛んでこないことに彼は驚愕していた。
「だからもういい。友人のために自分を人殺しにする必要はもう無いんだ」
身を起こす蓮。まだ完全に信じられないのか、フルフェイスを外さない。
「お前…何なんだ、なんで知ってるんだ、その剣はどっから…」
「話せば長くなる。もし主催者に復讐したいなら、ぼくについて来い。信用できないなら黙って見てるんだ」
見てもらう。それが一番の方法…彬はすぐに単車に跨って、その方向へ走り出した。
彼、蓮は少し躊躇ったが異常な事態は逃げる方で参加したときにもう慣れてしまっており、すぐに単車を立て直して彬を追った。
理不尽で有利な話が巡ってきた…ならば。
「はっや!」
「任せとけよ」
主催者の集まるビルを突き止めて正面から突っ込んだ圭太。驚く雄摩だったが、突然雄摩につかまれと言うと高速で走り出した。
目にも留まらぬ超速。警備員すら出る暇もなく、主催者が大会をモニタリングしている部屋まで速攻で近付いていく。
圭太たちが到達したとき、中ではまだ何も知らずに騒いでいた。
「流たちも輝明たちも上手くやってくれたみたいだな。できればこのまま隠れて蓮って奴を待って――」
高速過ぎて、比較的人間に近い雄摩は振り落とされはしなかったものの、オチていた。
複数のグループが固まって行動していた比較的大きな集団についていた流と昭仁。
早くも鬼が来たとDハザードが反応、流はおとりになるとばかりいち早く集団を単独で抜け出した。
二人ほどの追っ手が付いてきた。鬼の単車は速く、かなりのチューンがされているようだ。
「…それが命取りでもあるんだが」
広い道路に出る流と鬼。間隔が百メートル程度になったとき、流は急激なスピンターンをかけて鬼と向かい合った。
突然の行動、だが何の目算があるかも分からない自殺行為。機を逃すものかと鬼はそれぞれ凶器を抜いた。
流もまた虚空から愛刀を取り出した。…それも、二振り。
「!?」
左右から挟み撃ちを狙っていた鬼はお互いそれなりの間隔で追ってきており、間を抜けるくらいの幅がある。
流はそこを目掛けて一直線に進む。
右の、アーミーナイフを構えた鬼には日本刀タイプの剣で峰打ちを。
左の、警棒を構えた鬼には西洋剣タイプの剣で武器を狙って。
「はあっ」
ゴッ! スカァッ!
峰打ちはともかく、西洋剣は特に速い剣速で切りつけたため、金属音すら立てずに切れ飛んだ。
リーチの差で流が勝っていたために、警棒の鬼は振って初めてそれが握りの部分からほんの数センチしかないことに気付く。続いてもう一人の鬼が完全に倒れていることに。
状況に驚いている隙に、再びスピンターンをかけた流の斜め後方からの蹴りが鬼を車上から落とした。
大集団の最後尾で昭仁は鬼を待ち受けた。
ほぼ併走の状態まで近付いてきた鬼はメイスを振り上げ――――
「!!」
いきなり握っていたハンドルが落ちる。
初めて陥る異常な事態に対応できるはずもなく、あっけなく落ちて派手に地面を擦る鬼。そして巻き込まれる後続。
(…今ので三分の一はいったな)
残念ながら鬼は参加者を嘗めきっていたようで、完全にこちらのペースである。
先ほどの一番乗りの鬼は、下手からバイクの前輪を切り飛ばしたのだ。余程の使い手でなければこんな芸当は難しい。
事態が把握できないまま我を取り戻して襲いにかかってきた次の鬼。
ゴッ!
振り下ろされた鉄パイプが昭仁の頭部に炸裂する。
…振り向きもせずに昭仁は剣の柄で裏拳ぎみに殴りつけた。
ガツン!
倒れるはずの相手により強烈な反撃を喰らい、あえなく昏倒する鬼。懲りずに巻き込まれる後続。
「フン…そんなものが俺に通用するか、馬鹿め」
いかに能力が現代世界に合わせて制限されていようとも、この程度で動けなくなっては任務に支障が出る。
頬に一筋流れる血。舌打ちとともに昭仁は軽く指で拭い取り、振り払った。
「ちくしょう、何なんださっきの参加者! 武器持ってるなんて聞いてないぞ」
巻き込まれ組の鬼の一人が自分の単車を起こしつつ毒づいた。
「どうする…? 俺もう降りてえよ。あんなのが参加してたら命が幾つあっても足りねえ」
「馬鹿野郎! 獲物は多いんだ、全部が全部あんなのでたまっか」
やる気の残っている鬼は再び単車に跨って走り出そうとする。
「待てよ。今までさんざん殺って来たけどよ…なんか、来る時が来たって感じだ。どうでもこっちが殺られそうだ」
「何だそりゃ、あれは今まで殺ったクズ共の亡霊とか言うんじゃねえんだろうな」
「今回の給金はずんでもらわねえとな。へへ…」
一人、何となくとは言え先ほどの強すぎる参加者に負ける予感を口にした鬼は、しかし今まで人を殺す快感に酔いしれてきた鬼たちには相手にされない。
「おい、大丈夫か?」
「…打撲だけだが滅茶苦茶痛え。あのガキ、よくも…!」
前輪を切られて落ちた鬼は揃いのジャケットをボロボロにしながら立ち上がった。
「うわっ、お、おい!」
「やる気のねえ奴に単車はいらねえ。俺が使ってやる!」
先ほどの鬼を突き飛ばしてその単車に乗る。
もう再出発してしまった他の鬼を追って、速攻で加速して――
ドガアァァッ!
――かっ飛ばして横道から出てきた流に、派手に体当たりされて吹っ飛んだ。
激突したにも関わらず止まらず走行を続け、そのまま前方の鬼をとんでもない速度で追い上げて後ろから逆に鬼を狩っていく様を眺めて残された鬼は震え上がった。
…殺ろうとするも地獄、逃げるも地獄。初めての逃げ場の無い、命の瀬戸際の恐怖はあまりにも大きく、彼は失禁して倒れた。
彬は近寄ってくる鬼が彼だと感じた。例えフルフェイスをかぶってようが、そのぐらいは見分けられる。前回の優勝者…助けねばならない。
周りには誰もいない。一人になって走る彬を狙ってきたようだ。
彼が日本刀を抜いて迫ってくる。だが…CWの面々は常に異空間から武器を取り出す術を心得ていた。
後ろから追い越し様に斬りつけてくる…その瞬間彬が剣を抜く!
ガキン!
最初から刀を狙って振ったために当人へのダメージは無いが、一閃した刀身はあっけなく刀を二つに斬り飛ばした。
参加者が武器を持っているなど考えなかっただろう、彼は予想しない衝撃を受けてバランスを崩しかけている。彬は強引に近付き、蹴りでさらに畳み掛けた。
たまらず横転する彼。彬は単車を止めて下り、倒れている彼に近付いた。
「蓮っていったか、君。こんなことをして何になる」
ヘルメットの中から蓮の視線が彬を射る。
「…………」
「友人の復讐のためなら、もうやめろ。後はぼく達に任せるんだ」
「……く、乗れ……」
聞いているのか聞いていないのか、狙撃をやめさせるつもりらしい。
「『失格』したいのか…」
「心配要らない。狙撃手なら全員倒れている頃だ」
「…!?」
十秒を無意識に数え、それでもどこからも弾が飛んでこないことに彼は驚愕していた。
「だからもういい。友人のために自分を人殺しにする必要はもう無いんだ」
身を起こす蓮。まだ完全に信じられないのか、フルフェイスを外さない。
「お前…何なんだ、なんで知ってるんだ、その剣はどっから…」
「話せば長くなる。もし主催者に復讐したいなら、ぼくについて来い。信用できないなら黙って見てるんだ」
見てもらう。それが一番の方法…彬はすぐに単車に跨って、その方向へ走り出した。
彼、蓮は少し躊躇ったが異常な事態は逃げる方で参加したときにもう慣れてしまっており、すぐに単車を立て直して彬を追った。
理不尽で有利な話が巡ってきた…ならば。
「はっや!」
「任せとけよ」
主催者の集まるビルを突き止めて正面から突っ込んだ圭太。驚く雄摩だったが、突然雄摩につかまれと言うと高速で走り出した。
目にも留まらぬ超速。警備員すら出る暇もなく、主催者が大会をモニタリングしている部屋まで速攻で近付いていく。
圭太たちが到達したとき、中ではまだ何も知らずに騒いでいた。
「流たちも輝明たちも上手くやってくれたみたいだな。できればこのまま隠れて蓮って奴を待って――」
高速過ぎて、比較的人間に近い雄摩は振り落とされはしなかったものの、オチていた。
複数のグループが固まって行動していた比較的大きな集団についていた流と昭仁。
早くも鬼が来たとDハザードが反応、流はおとりになるとばかりいち早く集団を単独で抜け出した。
二人ほどの追っ手が付いてきた。鬼の単車は速く、かなりのチューンがされているようだ。
「…それが命取りでもあるんだが」
広い道路に出る流と鬼。間隔が百メートル程度になったとき、流は急激なスピンターンをかけて鬼と向かい合った。
突然の行動、だが何の目算があるかも分からない自殺行為。機を逃すものかと鬼はそれぞれ凶器を抜いた。
流もまた虚空から愛刀を取り出した。…それも、二振り。
「!?」
左右から挟み撃ちを狙っていた鬼はお互いそれなりの間隔で追ってきており、間を抜けるくらいの幅がある。
流はそこを目掛けて一直線に進む。
右の、アーミーナイフを構えた鬼には日本刀タイプの剣で峰打ちを。
左の、警棒を構えた鬼には西洋剣タイプの剣で武器を狙って。
「はあっ」
ゴッ! スカァッ!
峰打ちはともかく、西洋剣は特に速い剣速で切りつけたため、金属音すら立てずに切れ飛んだ。
リーチの差で流が勝っていたために、警棒の鬼は振って初めてそれが握りの部分からほんの数センチしかないことに気付く。続いてもう一人の鬼が完全に倒れていることに。
状況に驚いている隙に、再びスピンターンをかけた流の斜め後方からの蹴りが鬼を車上から落とした。
大集団の最後尾で昭仁は鬼を待ち受けた。
ほぼ併走の状態まで近付いてきた鬼はメイスを振り上げ――――
「!!」
いきなり握っていたハンドルが落ちる。
初めて陥る異常な事態に対応できるはずもなく、あっけなく落ちて派手に地面を擦る鬼。そして巻き込まれる後続。
(…今ので三分の一はいったな)
残念ながら鬼は参加者を嘗めきっていたようで、完全にこちらのペースである。
先ほどの一番乗りの鬼は、下手からバイクの前輪を切り飛ばしたのだ。余程の使い手でなければこんな芸当は難しい。
事態が把握できないまま我を取り戻して襲いにかかってきた次の鬼。
ゴッ!
振り下ろされた鉄パイプが昭仁の頭部に炸裂する。
…振り向きもせずに昭仁は剣の柄で裏拳ぎみに殴りつけた。
ガツン!
倒れるはずの相手により強烈な反撃を喰らい、あえなく昏倒する鬼。懲りずに巻き込まれる後続。
「フン…そんなものが俺に通用するか、馬鹿め」
いかに能力が現代世界に合わせて制限されていようとも、この程度で動けなくなっては任務に支障が出る。
頬に一筋流れる血。舌打ちとともに昭仁は軽く指で拭い取り、振り払った。
「ちくしょう、何なんださっきの参加者! 武器持ってるなんて聞いてないぞ」
巻き込まれ組の鬼の一人が自分の単車を起こしつつ毒づいた。
「どうする…? 俺もう降りてえよ。あんなのが参加してたら命が幾つあっても足りねえ」
「馬鹿野郎! 獲物は多いんだ、全部が全部あんなのでたまっか」
やる気の残っている鬼は再び単車に跨って走り出そうとする。
「待てよ。今までさんざん殺って来たけどよ…なんか、来る時が来たって感じだ。どうでもこっちが殺られそうだ」
「何だそりゃ、あれは今まで殺ったクズ共の亡霊とか言うんじゃねえんだろうな」
「今回の給金はずんでもらわねえとな。へへ…」
一人、何となくとは言え先ほどの強すぎる参加者に負ける予感を口にした鬼は、しかし今まで人を殺す快感に酔いしれてきた鬼たちには相手にされない。
「おい、大丈夫か?」
「…打撲だけだが滅茶苦茶痛え。あのガキ、よくも…!」
前輪を切られて落ちた鬼は揃いのジャケットをボロボロにしながら立ち上がった。
「うわっ、お、おい!」
「やる気のねえ奴に単車はいらねえ。俺が使ってやる!」
先ほどの鬼を突き飛ばしてその単車に乗る。
もう再出発してしまった他の鬼を追って、速攻で加速して――
ドガアァァッ!
――かっ飛ばして横道から出てきた流に、派手に体当たりされて吹っ飛んだ。
激突したにも関わらず止まらず走行を続け、そのまま前方の鬼をとんでもない速度で追い上げて後ろから逆に鬼を狩っていく様を眺めて残された鬼は震え上がった。
…殺ろうとするも地獄、逃げるも地獄。初めての逃げ場の無い、命の瀬戸際の恐怖はあまりにも大きく、彼は失禁して倒れた。
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