下僕=マスター…交錯する精神。
2005年9月2日 読書
ローゼンメイデン五巻、Phase27より。
めちゃめちゃネタバレです。要注意。
彼への接触に失敗し、「またやっちまったか」的な曖昧な表情で桜田家の玄関を出ようとする影。
もっと空気は重くていいはずだった。だが、その影の本人の意識が全く意味を取り違えていた為に、半端な雰囲気のまま…元の樹形図の姿であれば、危険な暗闇を残して終わるはずだった。
無論混沌がそれを放って置くはずもない。
「…ジュン君の担任さんで?」
不躾に背広姿のまだ若い教師に話し掛けたのは、右目を片方だけ不自然に伸ばした髪で隠した、まだ学生の年齢である青年だった。
だがその背広の教師――梅岡には、一瞬その人物が自分よりも大きく見えた。
錯覚か――背丈も、存在感も、身にまとわり付かせる空気も――自慢じゃないが、これでも中学教師としてそれなりにやってきたつもりの自分が、…例えるなら何かの小説でよくある、厳格な父親に正座で向き合って問い詰められているような…そんな重圧すら感じていた。
だが今目の前にいるのは自分より7、8程度は下の、まだ子供みたいな若者。感じた何かはもう忘れていた。
「…そうですが、何か」
心臓が縮こまりそうな感覚を忘れた後に残ったのは、見たことも無い、しかも変な髪形の青年にいきなり教職としての自分を呼ばれた、言わば“侮辱された”ような気持ち。自然と返事もぶっきらぼうになる。
「ジュン君のことで少し話が。…ああ、失礼。訳あって桜田家に居候させてもらってます汐街です。のりさん、居間いいかな」
汐街と名乗った変な青年は自分の意向などお構い無しに話を強引に持っていこうとしている。梅岡としては面白いはずもない。
だが…相手は桜田家に住んでいる人物だと言う。ジュンの姉ののりの態度も慣れたものだ。
ましてや、居候などという非常に微妙な関係。
ここは一つ、話を聞いておくのもいいかも知れない。
多少考えたとは言え、やはり軽く行動を決めた事を梅岡は気付いていなかった。
向上心が怒りに換わるまで、さほどかからなかった。
「先ほどのやり取り…いや、一方的な伝達ですか。入っていくのもどうかと思い、陰にて立ち聞きさせてもらいましたが」
頑張りを聞かれている。自分は自分なりに、ジュン君に対して努力しているはずだ。そう思っている梅岡は多少の引っ掛かりを気にするのをやめて言葉を返した。
「恥かしながら…まあ、結果はこの通りですが」
「のりさんの話では今までも何度かの訪問で、似たような結果になってるそうですが」
苦笑を含めての返事に、汐街は間をおかずに次の言葉を放つ。
梅岡はここでやっと気付いた。汐街の声は普通に聞こえるようで、その中にわずかながら尋問のような空気が混じっている。
いや、これは…まさか、怒っているのか?
道理で友好的な雰囲気が最初から無いわけだ。
「…ええ。僕のやり方に問題があると?」
梅岡の言葉に汐街の眉がぴくりと動く。
「まさか、問題が無いと思っているわけじゃないでしょうね」
攻撃的。汐街の言葉にあからさまな棘が混じった。
「勿論そんなことは思ってない。あったら僕が教えて欲しいぐらいだ」
売り言葉に買い言葉か、梅岡の言葉もため口になる。
だが次に汐街は、梅岡の予想から完全に外した事を言い放った。
「何を平然と。あなたもジュン君の登校拒否に一枚噛んでるはずでしょう!」
(………!!?)
一瞬意味を諮りかねる。
次に、様々な思考が巡る。
この青年は、いったいジュン君とどんな関係なんだ?
「残念ながら俺自身もジュン君に学校との関係を聞けるレベルじゃない…が、事情だけは大体理解してる」
(!?!?)
思考を読まれたかのような、頭で渦巻く疑問に対する的確な解答。
それ以前に…
「ジュン君に聞いたのでなければ、どこでそんな根も葉もないことを…」
「そんなことはいいんです。それに根も葉もないどころか、直接的な原因はほぼあなたにあるんじゃないですか」
ズバズバとかズケズケとかそんな擬音が似合う、今の自分はそんな感じだと汐街は自分でも思っていた。
自分が原因とはどういうことか。梅岡は汐街に問いただした。
「…そんなまさか」
明らかに自覚が無かったのだろう。汐街の口から語られた真実は梅岡を愕然とさせるのに十分だった。
彼自身、目の前の青年が嘘を言っているのではないかと疑う気力も失するほどの打ちのめされ方。
「…あなたはイマイチ目立たないジュン君が人目に付かないところで努力をしていたのを見て、本人が内気で表に出せないとでも思ったんでしょう。もし梅岡さんがジュン君ならそれで良かったのかも知れませんが、あなたとジュン君では性格のタイプが違いすぎる。
あまつさえあなたは自分のクラスの現状も把握しかねているし、どうしてあれが張り出されていたかも知らなかった。その上であんなことをするようじゃ、いじめっ子に加担しているも同じです。
これからも教師を続けて行こうと思うなら、ジュン君みたいなタイプの生徒に遭わないことを願いつつ震えながらするか、または考え方を白紙に戻す事をお勧めしますよ」
何一つ言い返せなかった。
「何より問題なのが、せっかく家庭訪問までして来てるのに、自覚が無くて問題に触れようとしないことでますます傷を抉っていること。
…………梅岡さん。あなたいじめられたりした経験ないでしょう」
これもまた梅岡の図星。
教師になるまで、彼には極めて平凡な人間関係しか記憶に無かった。
「…まあ、結構いるんですけどね。そういう先生は。
自分より年若いとは言え、人間一人が抱える闇をいくつも完璧に理解できる教師なんていやしないし。
今日の刺激もありましたし、これから考えてくださいな」
梅岡は、汐街に対して最初に感じた重圧感を理解したような、気がしていた。
と、そんな感じの乱入劇でした。
DiaryNoteやってて良かったです。レビューしてくれた人がいたおかげで最新刊の発売を知ることができました。
以前の旅行の時に既刊を全部買って以来の発売ということで待ちわびてました。まだまだ謎が続きます。
あー。真紅かーいい。金糸雀気付かれたけど結局大したことしてない。でも桜田家組と仲良くなれるといいなあ。マスターがああだから大丈夫だといいんですが。
にしても蒼星石はローザミスティカ取られた後も魅せるなあ…
そして銀ちゃんが気になりすぎる…
バトン渡されました。ついでに目の前に別のを一つ落とされてます…字数の関係で拾った方はまた明日にでも。
いいことバトン(from 秘さん)
・その日あったいいこと
やっと薔薇乙女五巻の短編を書けたこと
・数ヶ月以内にあったいいこと
…弐寺ではぴすか稼動開始(笑)
薔薇乙女五巻発売(笑)
びんちょうタンの元ネタ・出どころ理解(何)
・これからあったらいいなと思うこと
就職
自民党議席過半数取得
@p完全治癒
ドロンパビル完成(笑)
・次にバトン渡す5人の選ばれし戦士達
むーう…
見つけた方、拾ってやってください。
元々リンクも少ないのにこれでは毎度渡す人が固定になるではないですかー。
本日の検索ワード。
:やらないか IIDX 画像
残念だよ。
:ドラゴボールのゲーム
今日のMVPです。伏字にしたら何故かヒット…納得いかん。
めちゃめちゃネタバレです。要注意。
彼への接触に失敗し、「またやっちまったか」的な曖昧な表情で桜田家の玄関を出ようとする影。
もっと空気は重くていいはずだった。だが、その影の本人の意識が全く意味を取り違えていた為に、半端な雰囲気のまま…元の樹形図の姿であれば、危険な暗闇を残して終わるはずだった。
無論混沌がそれを放って置くはずもない。
「…ジュン君の担任さんで?」
不躾に背広姿のまだ若い教師に話し掛けたのは、右目を片方だけ不自然に伸ばした髪で隠した、まだ学生の年齢である青年だった。
だがその背広の教師――梅岡には、一瞬その人物が自分よりも大きく見えた。
錯覚か――背丈も、存在感も、身にまとわり付かせる空気も――自慢じゃないが、これでも中学教師としてそれなりにやってきたつもりの自分が、…例えるなら何かの小説でよくある、厳格な父親に正座で向き合って問い詰められているような…そんな重圧すら感じていた。
だが今目の前にいるのは自分より7、8程度は下の、まだ子供みたいな若者。感じた何かはもう忘れていた。
「…そうですが、何か」
心臓が縮こまりそうな感覚を忘れた後に残ったのは、見たことも無い、しかも変な髪形の青年にいきなり教職としての自分を呼ばれた、言わば“侮辱された”ような気持ち。自然と返事もぶっきらぼうになる。
「ジュン君のことで少し話が。…ああ、失礼。訳あって桜田家に居候させてもらってます汐街です。のりさん、居間いいかな」
汐街と名乗った変な青年は自分の意向などお構い無しに話を強引に持っていこうとしている。梅岡としては面白いはずもない。
だが…相手は桜田家に住んでいる人物だと言う。ジュンの姉ののりの態度も慣れたものだ。
ましてや、居候などという非常に微妙な関係。
ここは一つ、話を聞いておくのもいいかも知れない。
多少考えたとは言え、やはり軽く行動を決めた事を梅岡は気付いていなかった。
向上心が怒りに換わるまで、さほどかからなかった。
「先ほどのやり取り…いや、一方的な伝達ですか。入っていくのもどうかと思い、陰にて立ち聞きさせてもらいましたが」
頑張りを聞かれている。自分は自分なりに、ジュン君に対して努力しているはずだ。そう思っている梅岡は多少の引っ掛かりを気にするのをやめて言葉を返した。
「恥かしながら…まあ、結果はこの通りですが」
「のりさんの話では今までも何度かの訪問で、似たような結果になってるそうですが」
苦笑を含めての返事に、汐街は間をおかずに次の言葉を放つ。
梅岡はここでやっと気付いた。汐街の声は普通に聞こえるようで、その中にわずかながら尋問のような空気が混じっている。
いや、これは…まさか、怒っているのか?
道理で友好的な雰囲気が最初から無いわけだ。
「…ええ。僕のやり方に問題があると?」
梅岡の言葉に汐街の眉がぴくりと動く。
「まさか、問題が無いと思っているわけじゃないでしょうね」
攻撃的。汐街の言葉にあからさまな棘が混じった。
「勿論そんなことは思ってない。あったら僕が教えて欲しいぐらいだ」
売り言葉に買い言葉か、梅岡の言葉もため口になる。
だが次に汐街は、梅岡の予想から完全に外した事を言い放った。
「何を平然と。あなたもジュン君の登校拒否に一枚噛んでるはずでしょう!」
(………!!?)
一瞬意味を諮りかねる。
次に、様々な思考が巡る。
この青年は、いったいジュン君とどんな関係なんだ?
「残念ながら俺自身もジュン君に学校との関係を聞けるレベルじゃない…が、事情だけは大体理解してる」
(!?!?)
思考を読まれたかのような、頭で渦巻く疑問に対する的確な解答。
それ以前に…
「ジュン君に聞いたのでなければ、どこでそんな根も葉もないことを…」
「そんなことはいいんです。それに根も葉もないどころか、直接的な原因はほぼあなたにあるんじゃないですか」
ズバズバとかズケズケとかそんな擬音が似合う、今の自分はそんな感じだと汐街は自分でも思っていた。
自分が原因とはどういうことか。梅岡は汐街に問いただした。
「…そんなまさか」
明らかに自覚が無かったのだろう。汐街の口から語られた真実は梅岡を愕然とさせるのに十分だった。
彼自身、目の前の青年が嘘を言っているのではないかと疑う気力も失するほどの打ちのめされ方。
「…あなたはイマイチ目立たないジュン君が人目に付かないところで努力をしていたのを見て、本人が内気で表に出せないとでも思ったんでしょう。もし梅岡さんがジュン君ならそれで良かったのかも知れませんが、あなたとジュン君では性格のタイプが違いすぎる。
あまつさえあなたは自分のクラスの現状も把握しかねているし、どうしてあれが張り出されていたかも知らなかった。その上であんなことをするようじゃ、いじめっ子に加担しているも同じです。
これからも教師を続けて行こうと思うなら、ジュン君みたいなタイプの生徒に遭わないことを願いつつ震えながらするか、または考え方を白紙に戻す事をお勧めしますよ」
何一つ言い返せなかった。
「何より問題なのが、せっかく家庭訪問までして来てるのに、自覚が無くて問題に触れようとしないことでますます傷を抉っていること。
…………梅岡さん。あなたいじめられたりした経験ないでしょう」
これもまた梅岡の図星。
教師になるまで、彼には極めて平凡な人間関係しか記憶に無かった。
「…まあ、結構いるんですけどね。そういう先生は。
自分より年若いとは言え、人間一人が抱える闇をいくつも完璧に理解できる教師なんていやしないし。
今日の刺激もありましたし、これから考えてくださいな」
梅岡は、汐街に対して最初に感じた重圧感を理解したような、気がしていた。
と、そんな感じの乱入劇でした。
DiaryNoteやってて良かったです。レビューしてくれた人がいたおかげで最新刊の発売を知ることができました。
以前の旅行の時に既刊を全部買って以来の発売ということで待ちわびてました。まだまだ謎が続きます。
あー。真紅かーいい。金糸雀気付かれたけど結局大したことしてない。でも桜田家組と仲良くなれるといいなあ。マスターがああだから大丈夫だといいんですが。
にしても蒼星石はローザミスティカ取られた後も魅せるなあ…
そして銀ちゃんが気になりすぎる…
バトン渡されました。ついでに目の前に別のを一つ落とされてます…字数の関係で拾った方はまた明日にでも。
いいことバトン(from 秘さん)
・その日あったいいこと
やっと薔薇乙女五巻の短編を書けたこと
・数ヶ月以内にあったいいこと
…弐寺ではぴすか稼動開始(笑)
薔薇乙女五巻発売(笑)
びんちょうタンの元ネタ・出どころ理解(何)
・これからあったらいいなと思うこと
就職
自民党議席過半数取得
@p完全治癒
ドロンパビル完成(笑)
・次にバトン渡す5人の選ばれし戦士達
むーう…
見つけた方、拾ってやってください。
元々リンクも少ないのにこれでは毎度渡す人が固定になるではないですかー。
本日の検索ワード。
:やらないか IIDX 画像
残念だよ。
:ドラゴボールのゲーム
今日のMVPです。伏字にしたら何故かヒット…納得いかん。
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