地下のジャンクパーツショップから出て、相変わらず灰色の街並みを僕は歩く。
今日はそろそろ帰るつもりだった。まだ日は高いけど、とりあえず別の買い物も遊ぶ気も無かった。ならば家でパーツの検分や改造などに時間を費やした方が得だと思っただけだ。
その前に僕は、彼女と会ってしまった。
いつもの裏道を通る。
こういうところは大概決まって物騒な話があるものだが、ここはかなりの隠れ道なのか今まで僕以外に気付かれた気配が無い。
今年の記録的な猛暑の中、建物の陰での生暖かい風に多少の感謝を感じつつ歩いていたその時だ。
突然後ろから左肩をポンと叩かれた。
普段から路上では有り得なかったことが、それもこんな隠れ道で起こったという事に、誰かがいるということ以上に思考の大半を奪われていた僕はすぐにはリアクションを取れなかった。
その一瞬の後に、何故か小学生の頃によくやったいたずら――友人の肩を後ろから叩いて指を立てておくあれ――を思い出し、僕は叩かれた肩とは逆の方向に振り向いた。
そうすると大抵は順当な方向に振り向く以上に首を回さないと相手は見えないはずだ。通常誰かの肩を叩く時、人の真後ろからでは無く自分により近い方を叩くのが普通だろう。
今回の――こんなタイミングは後にも先にも一回きりだろうけど――結果はそのどちらでも無く、見返した先には誰かを確認できる姿は無かった。
すわどこの活発な子供かと振り向き直そうとする寸前に、僕を非日常が襲った。
これは明らかに事件。それも、人通りの無いこんな小道では、多分誰の助けも来はしない。
もし相手が僕を…殺そう、というのであればここほど格好の場所は無いだろう。
普通の人ならそんなことは考えもしないかも知れないが、僕は違った。考えてしまうのだ。
仕事にも趣味にも、学生の頃ほど夢中になるものが無い。何一つ情熱を傾けるものが無いということが、これほどつまらないとは…以前には全く想像し得なかった。
よく言われているけど、この世の中は本当に面白くない。
夢を叶えるとか、そういったことのできる人はほんの一握りもいるかいないか。もし叶っても、その先は大抵が利権で頭の中がいっぱいになっている屑野郎の支配する腐れ果てた金の社会。
僕はそんな社会に居る価値は無いと思っている。さりとて、体制をひっくり返すなどと思えるほど自惚れることも出来ない。
そして個人的に楽しむ何かも存在しない。ここしばらくは何をやってもどこかに空しさを感じて、のめり込めなかった。
それでも灰色の日々を何とかして色付けたくて、ジャンク遊びなどやっているのだけど…今一つ、物足りなかった。
結局総じて、今の僕に生きる理由など無いのだ。せいぜい育ての親に仕事の給料の一部を渡し、育ての礼を返すだけ。
それですら究極的には自己満足に過ぎない。僕が死ねば、僕からすれば全ては何の意味も無くなるのだし、どうせ下りた保険で一度に多く返す事だってできる。まあ、何にしても僕の知るところでは無くなることなのだ。
だから、別に…
今いきなり口を手で塞がれ、喉元に刃物をあてがわれる感触がしていたとしても、どうでもいいやと。
思った、だけだった。
* * *
街を歩く私の目に、一人の男が留まった。
…長期依頼の写真の男。
長期依頼と言っても、手がかりが足りないわけでもない。単に優先順位が低いだけで、遂行せねばならない任務には違いない。
だから本来無いはずの驕りが私の心に生まれてしまったのかも知れない。
…いや。きっとそれはこの男のせいだったと、思いたい。
男を尾行する。
彼は自分から人気の無い、誰もが通らなさそうな小道へと自分から入っていった。別に住宅地でもないその隙間は人目が無く、任務を達成するには最適の場所だった。都合がいい。
…ここしばらくの私は人間の心理が気になって仕方が無かった。私自身、人間であるために多少の思考は分からないでもない。だが私は特殊な身の上であるらしく、普通に街を歩く市井の人々とはおよそ異なった思考形態を持っているようだ。
任務のためには無用な感情と切り捨てたいところでもあったが、何故かは分からないがそれが出来なかった。人間らしさということなんだろうか…それこそ今の私には無用なのに。
そんな感情の尾を引いたまま、私は男の肩をポンと叩いた。
私が他人の心理に興味を持ち出し、それから始末しようとしている人間に死ぬ前の猶予を与えてやると様々な反応があった。
嫌だ、やめてくれ、死にたくない、金をやるから助けてくれ、これ何かのドッキリだよな、俺が何をした、等等。
突然の非日常を信じられない者から何かにつけて命乞いをする者。社会的に上の立場に居る者ほど後者が多く、そうでない者はほとんどが前者。
この国の怠惰な平和に慣れきった前者は、最後まで自らの命が危険に晒されていることも気付かないまま死んだ者すらいた。
物事の大半が金で廻るこの社会に慣れきった後者は、全財産をくれてやるから、等と下らない戯言を吐かせるだけ吐かせて殺してやった。命に代えられる物などあるわけが無いというのに。
どうせこの男もどちらかの類だろう、とタカをくくりつつもまだ反応を見てみたがる自分がいた。
だからそのどちらでもない男を見て、自分が今までに無い感情を覚えることなどその寸前までありえないとばかり思っていた。
…何とは無しに、比較的ありがちな設定を思いつきました。
珍しくカオスウォーリーズが関わっていない話を書きます。まあ、昨日の神羅万象ストーリー特別編もそうなんですけど…これは連載する予定ですし。
………うーむ。以前SRCで登場させていた、他の完全オリジナルの話より先に別モノを書くことになってしまうとは。
ちなみにそっちは学園ものの話で、元々恋愛ゲームを想定して設定を作ったものです。普通の生活あり、恋愛あり、衝突あり、はたまた暴走ストーリーな大事件あり。
ついでに主人公とメインヒロインが超能力を持っているという設定な辺りアレさが激しいのですが(苦笑)。
…そっちはそっちで、最初に考えたのはもう五年近く前という息の長い話です。
気になるという人はメールくれるなり掲示板にカキコするなりしてください。いないと思いますけど。
はぴすかが金欠により出来ないためにBMSでお茶を濁す日々、有名な方々のサイトを廻っているうちにDOUBLEに興味が湧いてきてしまいました。
…だって上手い人たち、みんなやってるみたいですし(俺みたいな下手くそと比べるのはそもそも間違ってるんですが)。
いやはや難しいのなんの。折角なので段位(級位)取ってみようかと思います。
本日の検索ワード。
:自殺ソング
これは数日前ですが(汗)。
落ち込んでるときに聞いてはいけませんマジで。暗すぎます。絶望します。
:茶倉 画像 Catch Me
まだ自分以外がやってるとこ見てないです。見たいです。
:ショートし爆発
…何がでしょう?
:ラディックス 2チャン
「チャン」がカタカナな辺り、それ系の人ではなさそうですね。
なんか有名な企業らしいです。ミラディン世界のアレは関係無いのか。
:スパ ティス 画像
スパロボ関係がヒット…残念、関係無いです。しかもこっちのは基本的に男。
ちなみに女で登場する場合は「ティニ」です。設定ばらしー。
今日はそろそろ帰るつもりだった。まだ日は高いけど、とりあえず別の買い物も遊ぶ気も無かった。ならば家でパーツの検分や改造などに時間を費やした方が得だと思っただけだ。
その前に僕は、彼女と会ってしまった。
いつもの裏道を通る。
こういうところは大概決まって物騒な話があるものだが、ここはかなりの隠れ道なのか今まで僕以外に気付かれた気配が無い。
今年の記録的な猛暑の中、建物の陰での生暖かい風に多少の感謝を感じつつ歩いていたその時だ。
突然後ろから左肩をポンと叩かれた。
普段から路上では有り得なかったことが、それもこんな隠れ道で起こったという事に、誰かがいるということ以上に思考の大半を奪われていた僕はすぐにはリアクションを取れなかった。
その一瞬の後に、何故か小学生の頃によくやったいたずら――友人の肩を後ろから叩いて指を立てておくあれ――を思い出し、僕は叩かれた肩とは逆の方向に振り向いた。
そうすると大抵は順当な方向に振り向く以上に首を回さないと相手は見えないはずだ。通常誰かの肩を叩く時、人の真後ろからでは無く自分により近い方を叩くのが普通だろう。
今回の――こんなタイミングは後にも先にも一回きりだろうけど――結果はそのどちらでも無く、見返した先には誰かを確認できる姿は無かった。
すわどこの活発な子供かと振り向き直そうとする寸前に、僕を非日常が襲った。
これは明らかに事件。それも、人通りの無いこんな小道では、多分誰の助けも来はしない。
もし相手が僕を…殺そう、というのであればここほど格好の場所は無いだろう。
普通の人ならそんなことは考えもしないかも知れないが、僕は違った。考えてしまうのだ。
仕事にも趣味にも、学生の頃ほど夢中になるものが無い。何一つ情熱を傾けるものが無いということが、これほどつまらないとは…以前には全く想像し得なかった。
よく言われているけど、この世の中は本当に面白くない。
夢を叶えるとか、そういったことのできる人はほんの一握りもいるかいないか。もし叶っても、その先は大抵が利権で頭の中がいっぱいになっている屑野郎の支配する腐れ果てた金の社会。
僕はそんな社会に居る価値は無いと思っている。さりとて、体制をひっくり返すなどと思えるほど自惚れることも出来ない。
そして個人的に楽しむ何かも存在しない。ここしばらくは何をやってもどこかに空しさを感じて、のめり込めなかった。
それでも灰色の日々を何とかして色付けたくて、ジャンク遊びなどやっているのだけど…今一つ、物足りなかった。
結局総じて、今の僕に生きる理由など無いのだ。せいぜい育ての親に仕事の給料の一部を渡し、育ての礼を返すだけ。
それですら究極的には自己満足に過ぎない。僕が死ねば、僕からすれば全ては何の意味も無くなるのだし、どうせ下りた保険で一度に多く返す事だってできる。まあ、何にしても僕の知るところでは無くなることなのだ。
だから、別に…
今いきなり口を手で塞がれ、喉元に刃物をあてがわれる感触がしていたとしても、どうでもいいやと。
思った、だけだった。
* * *
街を歩く私の目に、一人の男が留まった。
…長期依頼の写真の男。
長期依頼と言っても、手がかりが足りないわけでもない。単に優先順位が低いだけで、遂行せねばならない任務には違いない。
だから本来無いはずの驕りが私の心に生まれてしまったのかも知れない。
…いや。きっとそれはこの男のせいだったと、思いたい。
男を尾行する。
彼は自分から人気の無い、誰もが通らなさそうな小道へと自分から入っていった。別に住宅地でもないその隙間は人目が無く、任務を達成するには最適の場所だった。都合がいい。
…ここしばらくの私は人間の心理が気になって仕方が無かった。私自身、人間であるために多少の思考は分からないでもない。だが私は特殊な身の上であるらしく、普通に街を歩く市井の人々とはおよそ異なった思考形態を持っているようだ。
任務のためには無用な感情と切り捨てたいところでもあったが、何故かは分からないがそれが出来なかった。人間らしさということなんだろうか…それこそ今の私には無用なのに。
そんな感情の尾を引いたまま、私は男の肩をポンと叩いた。
私が他人の心理に興味を持ち出し、それから始末しようとしている人間に死ぬ前の猶予を与えてやると様々な反応があった。
嫌だ、やめてくれ、死にたくない、金をやるから助けてくれ、これ何かのドッキリだよな、俺が何をした、等等。
突然の非日常を信じられない者から何かにつけて命乞いをする者。社会的に上の立場に居る者ほど後者が多く、そうでない者はほとんどが前者。
この国の怠惰な平和に慣れきった前者は、最後まで自らの命が危険に晒されていることも気付かないまま死んだ者すらいた。
物事の大半が金で廻るこの社会に慣れきった後者は、全財産をくれてやるから、等と下らない戯言を吐かせるだけ吐かせて殺してやった。命に代えられる物などあるわけが無いというのに。
どうせこの男もどちらかの類だろう、とタカをくくりつつもまだ反応を見てみたがる自分がいた。
だからそのどちらでもない男を見て、自分が今までに無い感情を覚えることなどその寸前までありえないとばかり思っていた。
…何とは無しに、比較的ありがちな設定を思いつきました。
珍しくカオスウォーリーズが関わっていない話を書きます。まあ、昨日の神羅万象ストーリー特別編もそうなんですけど…これは連載する予定ですし。
………うーむ。以前SRCで登場させていた、他の完全オリジナルの話より先に別モノを書くことになってしまうとは。
ちなみにそっちは学園ものの話で、元々恋愛ゲームを想定して設定を作ったものです。普通の生活あり、恋愛あり、衝突あり、はたまた暴走ストーリーな大事件あり。
ついでに主人公とメインヒロインが超能力を持っているという設定な辺りアレさが激しいのですが(苦笑)。
…そっちはそっちで、最初に考えたのはもう五年近く前という息の長い話です。
気になるという人はメールくれるなり掲示板にカキコするなりしてください。いないと思いますけど。
はぴすかが金欠により出来ないためにBMSでお茶を濁す日々、有名な方々のサイトを廻っているうちにDOUBLEに興味が湧いてきてしまいました。
…だって上手い人たち、みんなやってるみたいですし(俺みたいな下手くそと比べるのはそもそも間違ってるんですが)。
いやはや難しいのなんの。折角なので段位(級位)取ってみようかと思います。
本日の検索ワード。
:自殺ソング
これは数日前ですが(汗)。
落ち込んでるときに聞いてはいけませんマジで。暗すぎます。絶望します。
:茶倉 画像 Catch Me
まだ自分以外がやってるとこ見てないです。見たいです。
:ショートし爆発
…何がでしょう?
:ラディックス 2チャン
「チャン」がカタカナな辺り、それ系の人ではなさそうですね。
なんか有名な企業らしいです。ミラディン世界のアレは関係無いのか。
:スパ ティス 画像
スパロボ関係がヒット…残念、関係無いです。しかもこっちのは基本的に男。
ちなみに女で登場する場合は「ティニ」です。設定ばらしー。
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