――光瀬龍『百億の昼と千億の夜』
     萩尾望都『百億の昼と千億の夜』より――

 基本型地球圏に於いて常に繰り返されるこの事象は、ヒトが現れる遥か前の時代、生き物が陸に上がり始めたこの頃でも変わる事は無い。
 彼らは自分を他の生き物、他の存在に悟られる事の無い様その姿を空そのものと化して、砂浜を染めては戻ってゆく白波を眺めていた。
 月が存在する以上は潮汐力が働く。それを誰かが知覚してようとしてなかろうと、波は止め処も無く寄せてはかえす。
 その下ではまだ未熟な体系の生物たちが生命を謳歌している。緑に覆われた陸地に同化して行くのは時間の問題だが、ひとまず今のところは水の中だった。

 この時代から見たとしても太古の昔、何気なく化合した自然の物質が有機生物を生み出した。本来、普通の次元であればそれが正解なのだがこの次元の地球ではそれが仕組まれたことであろうとは、一体誰が考えようか。
 アイ系…別名太陽系第三惑星として生物が生存し続けやすく、進化の容易く辿れる環境を持ったこの星がそういった者たちに見つかった時点で手に落ちないわけがなかった。
 やがてその者たちが自らの手に負えなくなった生物を消してしまおうと画策するのも見えていた。
 波を眺めていた彼らは、新しい時間軸を発生させてしまう事を承知でより基幹とする真実に沿った歴史を作ろうとする一団であった。
 この地には兆候が無いことを確認すると彼らは空に溶けたまま移動を続けた。また別の地で観測を続けなければならなかった。時を越えようとすることはできるが、その度に新たな時間軸ができてしまう。それは避けたかった。
 億を越える年を、彼らはずっとこの星を見続けた。

 最初の兆候はアトランティスに現れた。
 すでに四億年以上が経過していたが、待った甲斐があったというものだ。
 やはり高度な知的生命体が必要だったか、この時代はもうヒトが陸地の多数の場所で繁栄している。
 そのヒトに、仕組んだ者たちが接触を起こしたのだ。
 この時点で既に高度な知性がいずれは自分たちに迫ってくるだろう、そう予期したに違い無い。そう思った彼らの一人は、人間としてその島へと渡った。

 その者は自分を神、ポセイドニスと名乗った。
 巨大なヒト。この時代の人間が思い描く神そのものの姿をとったその者に、人間が敬意を表さないわけが無かった。自分たちが信仰していた神が現世に来た、当然のことと言える。苦笑しつつも彼はそのヒトならぬ気配を隠しつつ従った。
 その者の実に要領のいい都市計画に彼は目を見張った。その通りに進んだ都市の建設は異様に速く、異様なまでに高度であった。人々はみな幸せに暮らしていた、まさに理想郷だった。
 政治機関に就いていた彼は、間もなくその日に遭遇する。


…遂に手を出すことに…
スケールがでかすぎる話にいつか手を出したいと思ってたんですよ。
今回の話は大分ややこしい書き方をしてますが、次回からはどうなるか…

神羅万象チョコ、ようやくドロール、ゼクシード、アレックスゲット!
残るはヒラーリンとヴァンファレスだけです。…切実にトレード希望。

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