俺の思い違いで、実は石崎さん本人だったら…?
 いや、それは無いな。石崎さんが眠ってからまだ二時間も経ってない。
 操作した脳波はそんな短い眠りを許さないはずだから。
 …あちらから俺を探してくれてるみたいだ。
 だったらここは敢えて隠れずに真っ向勝負!
 ただし、前回みたいに無茶は出来ない。
 最初から脳波を攻める、格闘なんてしたら体がもたないからね。
 部屋の隅っこへ。相手と対峙しても距離に余裕が無いと厳しい。

 ガラッ、と開く引き戸。その向こうにいたのは確かに石崎さん。
 「汐街くん…!?」
 当人そのままの驚きの表情。
 なかなか良い演技をする……だが、バレバレだ。
 脳波のパターンが全然違う。性別が違えばその差はさらにでかくなる。
 相手を見誤ったな。…っても、こんな能力を持ってる奴がいるなんて予測はとてもできやしないだろうけどさ。
 「一人でこんなところに来て、怪我までしてるじゃない」
 こいつら乗り移った人の記憶読めるのか。そうでもないと結構大変かもしれないけど。
 「診てあげるわ…」
 …結構な演技だけど、端はしに違和感が拭えない。
 石崎さんはそこまでダイレクトに物を言わないんだよ、残念。
 俺がさっきから黙りこくってるのを不自然に思わないのも違うしね。
 ゆっくり歩いてきてる所で、終了確定。
 『感受性プレッシャー・大』
 ちょっと石崎さんに影響があるかも知れないけど、それは後で何とかしよう。
 敵は霊体、つまり精神生命体。精神的なダメージはそのままダメージと化すので、この状態のまままず痛めつけておこう。でないと逆に俺がやられてしまうかも。
 これならしばらくの間勝手に苦しんでくれる。かなりの重圧なのでこっちに気など向けてはいられないだろう。その間にいつものアレを組み上げる。
 『内部異分子の剥離』。
 程よく満身創痍になったと見えるところで発動。そして、霊界位相転移…
 苦しみ転げる小さな人影。
 ……ジジイじゃないか。驚いた……死ぬ時素直に成仏すれば良かったのに。
 まあ相手が何だろうが、俺の力は手を抜かない。
 『朽チロ』
 肉体があるときの怖れの一つ。霊体でもまだ体が覚えていたのだろう。
 俺がその破壊の指令を与えると、ジジイの霊体はますます皺を深くし、やがて肉を失い皮も腐り果て、残った骨が崩れて消えた。
 ふーっ。俺は安堵のため息をついた。
 さ、あとひとふん張りだ。

 霊界からの視点なら、少しは物が透けて見える。
 それなら元々こっちにいるときに探索すれば良かったじゃないかと思うんだけど、さっきは忘れてたんだよ…
 思ったとおり、庭の藪のやや奥まったところに木の蓋があり、その下に土の階段が続いて地下室に至っているようだ。
 本来この霊界で霊体ならなんでもすり抜けて通れるはずなんだけど、俺は生身の肉体だから無理みたい。
 霊体での敵の奇襲があっても面倒なので、ここらで現実世界に戻っておく。
 湿った蓋を取ると闇に続く階段。
 暗さに慣れた目で、俺は敵の待つ冷たい地下へと下りていく…


日課だけで時間が無いですよーうわー。いつものことですが。
そろそろPCの容量がひっ迫して参りました。
でも整理する時間も無いってどういうことじゃー。

コメント

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索