そういうことだったのか…そのために俺が。
 三回も知り合った人々の死を目の前にして何がどうなってるのやら分からなかったのも、これで見納めだな。
 「そういうことはもっと早く教えてください…」
 『修正すべき運命は限られているからな』
 結局そうなるのか。今回あの能力を封じたのもこの正統な歴史のため……
 『お前が因果関係に確たる要素として組み込まれるのを待ったというのもあるが』
 「はいはい、分かってます」
 そう、俺は行動を起こすまで世界そのものに馴染むまでのんびり平和に暮らすか、何気なく生きていくしかないのだった。
 何度やっても、今回みたいに繰り返される悲劇を目の当たりにしていかないといけないのは慣れないし正直つらい。
 任務だし、しょうがないんだがな。
 『今回は激しい戦いになる…例の能力の封印を解くぞ』
 有難い、それが無いとまず戦えそうに無いしな。
 『もちろん霊界への位相転移もできるようにしよう』
 …それが無いと物理的に戦えませんし。
 もう友人の死を見たくない。次という最初で完全に仕留める…!

 確実に俺が因果関係に仕組まれるよう、今回も任務前に教えられた廃屋に侵入する。
 入り口には鍵が掛かっているが、針金でチョイチョイっと。
 がちっ。
 ズン。
 ………ぎええええええええ!!
 さすがに四回目ともなると相手も警戒したか…初めて顔を見る巨体の浮浪者がいきなり立ちはだかっていた。
 ついでに銃を構えて俺に向けてる……洒落にならない。
 右手で掴んでいる取っ手を軸に、地面を蹴ってくるりっとドアの反対側に。
 コンマ数秒後にパスッ、パスッという音とともに地面が二つ抉られた。あっぶな……
 ドアを激しく蹴り飛ばして強引に閉まらせ、その隙に走って通りの角を曲がれば大通り。
 今回は敵状視察は無理だったか。でも…気にしなくても、今俺が通っている学校で行方不明になってる生徒は、まずあの中にいるはず…だ。

 次の日の学校…
 今日もまたLHRまでに来ない生徒が一人増えた。
 石崎智里…活発で転学してきた俺に積極的に関わってくれた。彼女のおかげでかなり早くこの学校に馴染むことができたんだ。
 …そうだ今回はトチれない。
 周りでは某国に拉致られただの何だの勝手な論議を飛ばしてる奴もいる。惜しい、合ってるのは拉致という部分だけ、今回のこれは小規模の集団による犯行なのだよ。
 ただ…今回も例によって起こってしまった、俺を遠巻きに見ながらのヒソヒソ話。俺が転学してきてから行方不明事件が本気で深刻化してきた以上、疑われるのは覚悟の上だったが…変なところでトラブルになるのは勘弁して欲しい。
 担任が気まずそうに入ってきて、石崎さんが今朝から自宅にいなかったと俺たちに伝える。犯人もわざわざ夜中に行動するところがミソだな。

 決行は今夜――
 自分に言い聞かせながら今の自宅に帰る。
 「…あれ」
 鍵が開いている…合鍵なんか無いよな。ということは!?
 急ぎ、解かれた能力で周囲に人がいないか知覚を働かせた。
 …どうやらすぐ近くにはいないようだ。だが家の中に脳波反応が一つ。
 誰かに入られた…俺は慎重に、音を立てないように家に上がった。鍵も万一のために閉めておく。
 感じた脳波は安定していた。多分中で寝ている…無用心はどっちだか。
 …俺の寝室。出所はベッドの上だ…勝手に使うな。
 そっと寝室のドアを開けた。
 「…えっ」
 間違い無く敵と思っていたために誰の脳波かまでは気にしてなかっただけに、それが誰かと分かって驚いた。

 石崎智里が俺のベッドでスウスウ寝息を立てていた。

 ……いかん、思考を止めるな。考えろ。
 同時に彼女の脳波から記憶を読む……
 そう、俺の封じられていた能力とはこれだ。
 他人の脳波を感じることができる。脳波から記憶や思考を読み取れる。
 そして…その他人の脳波を思うままに操作する。
 考え方を変えさせたり、記憶を書き換えたり、行動を先読みするなど朝飯前だ。
 修復が効かないほどの時間脳波をぐちゃぐちゃに乱してやれば…壊れた人間の一丁出来上がり。
 あまりにも危険な能力なので封じられてることのほうが多いのはこのためだ。こんな能力、普通に使えたら危なっかしいったらない。
 …彼女の記憶そのものは昨日就寝したところで終わってる。だがこの小脳に“記録”されているものは…
 間違い無く彼女に犯人が乗り移ったのだ。
 今までに起こった廃屋を燃やしての集団道連れ自殺事件。一見何の関連性も無い人が起こした数々の事件は、しかし数体の亡霊、死霊が起こしたものだという。
 関連性といえば…道連れにされた少年少女達は皆明るく清く正しく美しく、な連中ばっかりだったな。
 それだけこの世の明るい部分に憎しみを抱いているのだろう…
 …憎しみ。以前CW全体で関わったある時間軸の一連の事件にもその感情がキーワードになっていたことがあった。
 今俺がいる次元でのこの事件は再びそれが起ころうとしているということなんだろうか…
 いや、残党ということもあり得るか。
 …何度でも思ってやる、今夜で終わらせる。
 さて、推測だが犯人、俺を合法的に警察に突き出すつもりなんじゃないかと思われた。
 目が覚めたら俺の家、だったらそりゃ普通彼女も俺を犯人だと思って疑わなくなるだろう。
 仕方ないか…早速俺は彼女の記憶の改竄に取り掛かった。


書いてないですけど、汐街雄摩くんのお話です。
いくつかのゲームストーリーとかのオマージュなんですね。
分かりますでしょうか。
あまり良くない元ネタも含んでますので知らないほうがいいかも。
次で終わらせたいです。オマージュ一つだけは二次創作的に出すつもりです。
ハイ。
…CW最後の人の話かなり難産してます。勘弁。

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