聖地。
 久し振りの遠征に非常に心踊らす俺。
 しかしなんというかまあ…相変わらずだな、ここは。
 「おーい、何ぼーっとしてんだよ、さっさと来いや」
 同類な友が気がつけば遠い…
 「待ってくれーい」
 「早く来いよ」
 先にあいつの買い物終わらせてから好きにさせてもらえる約束だしな。
 走って追いかけた。

 「…キナ臭い」
 友人の最後の買い物を済ませてビルから出ると突如友の一言。
 「陰謀の匂いがプンプンするぜ」
 思わずもれ出た「は?」の疑問文にもネタで返す友。やはり俺はいい友を持った。
 「間違いない…俺たちを貶めて受けを狙うカスどもだ」
 「………なんだそりゃ?」
 「知らんのか?」
 質問して返された質問に俺は首を振った。『質問に対して質問で返すな』とか答えたら空気的に殴られると思ったからだ。
 「お前を貶めて得する奴なんているのかよ」
 「…なんで俺だけなんだ?」
 「だって俺近場の人間じゃないし」
 「それはそうだけど、俺たちってのは俺ら二人だけじゃない」
 …やっぱ分からん。
 「この街の人間大半、要するにオタだ」
 オタを貶めて喜ぶ…そういう差別主義者、意訳すると一般人のことか?
 「顔からして分かったようだな、そうテレビ局だ」
 …違った。こいつも間違ってるけど。
 というか、テレビ局…なるほど。
 「連中は視聴率乞食だからな、オタは貶めてネタにするだけの対象だ。
  ぶっちゃけた話、俺たちオタは奴らの食い物に近い」
 そう思われてると思うと腹立ってくるな…
 「あ、あれ見ろよ」
 少し離れた歩道でそれらしき筋の人を捕まえては何か聞いてる奴がいる。
 「あれだな匂いの元は。間違いない」
 キナ臭いって本当には匂わないっての。そういう問題でもないけどさ。
 このまま歩いてると恐らく俺たちも…
 「多分、俺たちに話し掛けてくる。金がかっても絶対に応じるなよ」
 あの男に聞こえない程度の声で友が俺に忠告。心得ておこう。
 「あ、ちょっと君たちいいかい」
 …さっそく来たか。速すぎる気もするが。
 「今取材やってんだけどね、協力してくれないかな」
 「嫌です」
 俺のネタ度は古いなあ…
 「いきなりそう言わずにさ、ギャラも色付けるよ」
 これでホイホイ付いていって、安かったらオン○ゥル〜言えば良いんだろうか、オタとしては。
 「すみませんがお断りします」
 「あーそうか、じゃしょうがないな。ごめんね手間とらせて」
 そういうと男は去って行った。
 「尾けるぞ」
 「え?」
 またも唐突な友人の声。
 「誰かがあいつに引っかからないように監視するんだ」
 「え、俺の時間は…」
 何考えてんだ、確かにテレビに出るのもマズいが。
 「そんなことよりオタの権限を守るためにもこっちのほうが重要だ」
 言うといきなり良さげなポジションに移動しようとする友人。
 俺の腕をがっしと握って。
 「ウソダドンドコドーン!」

 受けようとする奴を発見。
 「ちょっと待てそこの君」
 …友よ、君は速かった。否、速すぎる。
 見た目からしてモロオタな青年が突然のことに戸惑っている。
 「君がテレビに出るなどということはオタ全体からの裏切りととるぞ」
 わけもわからずえっ、えってな感じでうろたえる青年。
 「君達は…なんなんだ、人の仕事の邪魔をする気かい」
 そこに男が横槍を入れる。
 「それが仕事と言うなら、俺のしてることは義務だ」
 …なかなか格好いい台詞を吐く。状況さえ間違ってなければ…
 確かにまあ、間違ってないんだけどな。
 大体のことは尾行してる間に聞いたから、いかにオタがテレビ出演してしまうのが危険なことか分かってきたし。
 奴等テレビ局は視聴率のために見た目からいかにもなオタの奇抜な行為で受けを狙おうとする。
 それを見る一般人がオタがそういう悪例ばかりだと勘違いする。
 これが悪循環ってやつだ。洗脳にも似ているな。
 「何を言ってるんだかわからないが、これからも邪魔する気なら警察呼ぶよ」
 ぐっ、これは痛い。友人はそんな顔してた。
 先日も持ち物検査でうろついてたというしな…殺伐とし過ぎだよ。
 ぶっちゃけ路地裏で海賊版売ってる外人国に帰ってよし。今はオマエラの時代じゃねーんだよ。
 …友人が男と戦ってるうちに俺は青年に近寄る。
 会話の意思表示に肩に手をポンと置く。
 「テレビ出演はマズいぞ、君」
 はっと気が付く青年。今まで友人の方ばかり見てたみたいだ。
 「え、いや、でも…あれだけ貰えれば欲しかったDVDBOX買えるし、受けてもいいと思った」
 アニオタか…受けられたらかなり厄介だったな。
 「いいかい、あいつらテレビ局は俺たち突き抜けたレベルのオタの行動を全国に流して、オタク全般の評判を悪くしようとしてるんだぞ。それでもいいのか」
 「え、何でテレビ局がオタクの評判落とそうとするんですか」
 「というより君みたいなのが放送されるからオタク全部が全部君みたいなのと思われてしまうんだよ」
 この青年…なんつう典型的なカッコしてるんだ。
 「はぁ…」
 気の抜けた返事。まずい自覚が無さそうだ。
 「君、その服装で出歩いても平気と思ってるかい?」
 「はぁ、別にかっこよくなくてもいいでしょうし」
 …駄目だこいつ…早くなんとかしないと…
 ……当然、これをかっこいいだの似合ってるだの言えばもっと論外だけど。
 「君が良くても周りが引くぞ。それで全国放送された日にゃオタク全部がセンスの無いダサ男と思われちまう」
 「…僕にセンス無いって言うんですね」
 ぎくりとしてしまった。
 「それはいいけど、テレビ見てる人だって分別くらいつくでしょうに」
 「甘いよそれは。テレビに出てること何でもホイホイ信じちゃう馬鹿もかなり多いんだぞこれが」
 事実(いやマジで)。
 「君自身が見た目で判断しないとか、見た木だけで森全部が同じような木だけで構成されてるとは思わない人間だったとして、他の人が君と同じ以上な判断能力を持ってるとは限らないんだぞ。世の中には間違ってることを平気で信じ込んじゃう人だってわんさかいるんだからな」
 これだって当然のごとき事実(悲しいけどほんとマジで)。
 「少しでもオタク全体の風評を下げたくなかったらテレビに出ないとか、君だけでも多少はセンスつけるとかしなきゃ駄目だ。テレビが関わってきたら、もう君だけの問題じゃないんだからな」
 諭すように俺は言っていた。ガラでもねえなあ。
 「…はい、分かりました」
 本当に分かってるかは分からないが少しは期待できる返事。
 そのまま彼は去って行った。

 ちなみに友はこちらの言い分が弱く長期戦になってたところ、青年がいなくなったところで男も去っていったらしい。
 勿論、男が言い負けて去ったかのように俺に自慢したのは言うまでも無い。


11月の半ばごろにオタを貶める番組が放送されてたとか。
しかもやらせの疑惑もあるそうですね。
いちオタとして、非常に遺憾です。
いろいろと言いたいことはありますが、長くなりますので。
今日は他にネタがありますし…

バイト先に変態さんが登場ですよ。正確には駐車場までですが。
字数が足りないので続きは次回の講釈で。
所々にネタ使いまくりでした。

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