ワープアウト後、円筒から出ると俺が入ったりたった今出てきたような円筒がたくさん並んでいる部屋だった。
 それ以外には特に大したものは無く、殺風景。機能性重視ってことか。
 「一応、空気はどんな世界の人が呼吸しても大丈夫な組成にしているはずだが、支障は無いか?」
 おいおい! それって下手したら俺はもう死んでたかも知れないってことじゃないか。
 「いや、支障は無いですけど…下手したら来た瞬間一巻の終わりって可能性が…」
 「大丈夫だ。普通の生き物なら生き返らせることができる」
 …………臨死体験、した方がよかったりして。
 世間で体験した奴は大体「もう懲り懲り」と言ってたような気がする。もしあんな戦いの日々になるなら一度死んで怖さを思い知った方がいいんじゃないかな…。
 「多分そんな必要は無くなると思うがな」
 「…?」
 思考を読まれてるのは分かってるから突然言われてももう大丈夫だけど。
 「必要無くなる」って何だ?
 流は何も話し掛けて来ないまま、円筒の並ぶ中をすたすた歩いて行った。
 …組織長、とやらに会えばわかるってことだろうか。
 とりあえず、俺は小走りに流についていった。
 「ここは俗にターミナルと呼ばれる転送室だ」
 いきなり話題転換。
 「今の俺たちのように異次元間の転送をする時はこの部屋のカプセルを使う」
 「それにしては数が少ないような」
 「次元は無数にあるから、こっちから転送する時はそこにある入力装置にコード番号を打ち込んで転送する。一つ一つなどとても用意はできん」
 そりゃそうか…
 俺と流はその部屋のゲートを通ると通路に出た。反対側の通路脇にいくつも部屋の入り口がある。
 「そっちの入り口はこの組織の四天王と呼ばれる者に与えられた支部へのワープゲートだ」
 「四天王…」
 またベタな。
 「ちなみに四天王という呼び方は組織長…いや、正式には創始者、またはクリエイターと呼ばれているんだが、その創始者が決めた物だ」
 「…センス無いんですね」
 しかも自分のセンスに対する防衛もしてる…冗談は下手でも少しは向上しようとしている姿勢がいいなあ。
 「しかしワープゲートって言いますけど、さっきの次元間移動みたいなカプセルは無いんですね」
 「あの部屋のものと違って移動先は固定だからな。違う空間を繋げているだけだからそのまま歩いて行けば支部へワープしている」
 空間を繋げて…って……今更だけどオーバーテクノロジーな………
 そう思っていると、ワープゲートの入り口のパネルの一部が光った。
 「今、このゲートから誰か出てくるみたいだな」
 なるほど…空間的には違う場所だから突然出てくることでもあるんだな。警告用に必要なわけだ…駐車場みたいだけど。
 タッタッと軽快に走る靴音と共に出てきたのは俺より一つ二つくらい年下に見える少年だった。
 「ようリューク!」
 「よう、ケルン」
 「無理してオレに合わせた挨拶しなくてもいいって」
 …リューク? 流のことか?
 「で、そいつが創始者の言ってた“現代人”てやつか?」
 ケルンと呼ばれた少年が俺に気付いて言う。
 現代人…確かに流が言ってるような世界を廻ってるとしたらそういう言い方も間違いないような気もするけど…
 「そういうことだ。…こいつはケルン、四天王でここのナンバー2だ」
 「よろしくな。…しっかしすげえ髪型してるな、お前」
 「よ、よろしく」
 そう言えば流は全然気にしてなかったなあ…
 俺の髪は極端な横分けになっていて、右目が隠れるようになっている。
 言わなかったが、昔結構な事故で右目を激しく損傷し、結局摘出してしまっており、今は義眼になっている。
 どっちにしろ見えないし、髪切るのも億劫に感じていたのでそのまま伸ばしたらこんな感じになったのだ。
 「ま、それで平気ならいーんだけどな。じゃ」
 「これから任務か?」
 「そ。あんま手間かかんないと思うけどな」
 流と二、三会話を交わすとこっちに向かって手をぶんぶん振りながら、次元転送カプセルのある所に走って行ってしまった。
 「明るい人ですね」
 思ったことが素直に口をついて出た。
 「あいつは元々そういう奴だったからな」
 ふーん……
 「それと、リュークって…」
 疑問。
 「それが俺の本当の名前だ。リューク・ランティル」
 リューク・ランティルで嵐斗流…なるほど。
 「ちなみにあいつはケルン・ノーティで野津圭太(のづけいた)とも名乗っている」
 「その方が自然で普通って感じがしますね」
 「他にいい名前が思いつかなかったんだ…」

 ターミナルを出ると大きいガラス窓が片一面に張られた明るくて広い通路に出た。
 「ここが通路兼ロビーという感じかな」
 窓の側に長椅子がいくつも置いてある。壁の方にはジュースの自販機らしきものまである…
 「四天王、について聞きたいみたいだな」
 いきなりそんな単語が出てくれば気にもなる。ましてやここは俺がいたような世界の常識が通用しないはずなのだ。
 どんなことにも興味を持って知っていかないと…それにファンタジーチックなことが実際に起こりうるなら、面白そうとしか言えない。
 歩きながら、流は解説してくれた。
 「ここで最も強い力を与えられた四人を数えてそう呼んでいる。
  その下に五人衆がいて四天王に次ぐ実力を持っている。
  あとは擬似人格を与えられた雑兵軍団。
  そしてこれらをまとめる創始者。
  これがこの組織、カオス・ウォーリーズの大体全部だ」
 カオス・ウォーリーズ…
 「四天王とは俺ことリューク・ランティル、
  さっき会ったケルン・ノーティ、
  そしてディルアス・カインドネス、ライル・メビウス。
  今の所全次元最強チームと言える」
 全次元…最強!?
 「ありとあらゆる次元で活動するため、能力のインフレは仕方ないという訳だ。
  活動というのは…」
 流はここで一度言葉を切り、大きな扉の前で立ち止まった。
 「ここが創始者のいる謁見室だ。話の続きは当人に聞くか、後にしよう」

 俺は導かれるまま、創始者に対面した…


主人公君第四弾。今回は設定説明が多くなってしまいましたな。
同じようにディルアス、ライルにも日本人名が存在します。
日記での紹介はまだですが、カオス・ウォーリーズのある次元での時間軸的にはこの時点で既に五人衆が存在します。
そしてまだまだこの話は続きます。続くったら続く。

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