いつも変わらない時間のサイクル。退屈。
 起きてご飯食べて学校行って授業して帰ってきて適当に遊んで風呂入って寝る。
 確かに平和だけど、やっぱりつまらない。
 数年経って大人になれば、勉強だの何だのからは逃れられるかも知れない、でもどうせ緩慢な生活が続くのは変わりないだろう。
 いっちょ刺激が欲しい…日常ぶっ壊すような事件でも起きないか、なあ。
 …俺は、そんな不謹慎なことを期待する日々を送っていた。

 ある夜のことだ。
 コンコン、というノック音が響く。
 俺の部屋の窓からだ。カーテンを閉めてるので外の様子は見えない。
 というか…この部屋、二階にあるんだけど。
 とりあえず様子を見ることにする。
 もう一度、二回窓を叩くノック。
 …恐る恐る、ゆっくりカーテンを開けてみる。
 人…窓の外には足場が無いから…幽霊か?
 シャッと勢い良くカーテンを閉めた。慌てて(?)窓をゴンゴン叩く音。
 「さて、今日の晩御飯何かな」
 わざとらしく呟いて部屋を出ようとすると、突然頭の中に声が響いた。
 『そりゃないだろう。ちょっと待て』
 今まで体験したことの無い感覚に驚いて数秒停止してしまった。
 「…えーと……誰?」
 思考を整理して、何とか絞り出した台詞がこれだったが。
 『お前がさっき見た窓の外の幽霊』
 事も無げに頭の中に返ってくる声。
 「あー、やっぱりそうなん…」
 と、ここで妙なことに気付く。
 「って、幽霊が窓叩けるかい」
 『お前が俺のこと幽霊って思ったから幽霊と言っただけなんだが』
 わかりやすく言ってくれる。って…
 「人の考えを勝手に覗かんで欲しいんですけど」
 『いや分かりやすいって思ったからだが、何か不満か?』
 不満だ。いろいろ。
 「当たり前ですって。それで結局何者ですか?」
 『それを話すためにも、普通に話したいんだが入れてくれないか』
 入れてくれ…ねえ。そりゃまあ最初からそんな感じで窓をノックしてたんだろうけど、何にしても不審者には違いない。
 幽霊じゃないかも知れないけどそれだと屋根辺りから吊っているか、それとも浮いてるかとなるけどどっちにしても不自然すぎる。いや、そもそも俺に話し掛けるなら犯罪の香りはしないか。
 …じゃなくて、それ以前にテレパスとかって有り得ないだろ。
 「んー…俺が外に出て、その辺の公園ででも話すってのはアリですかい?」
 『ありだな』
 「じゃその方向で」

 「…随分待たせるじゃないか」
 彼は律儀にベンチに座って待ってくれていた。
 あまり表情が無くて不満なのかそうで無さそうなのか、よく分からなかった。声の調子も平坦だし。
 「いや失礼、つい晩御飯を食べてしまって」
 「確かにいきなりな来訪で悪かったとは思うが、それもどうかと思うんだが…」
 多少は反省してるっぽい。
 「まあいい。とりあえず俺が誰かってことからだが」
 「うん。テレパスとか浮くとか、何でそんなことできるんだか」
 普通に疑問も重ねて訊く。
 「俺は嵐斗流という。異次元から来た」
 「…はい? えっと」
 いきなり信じ難いことをさらっと言われた。
 「だから、異次元だ」
 「…よくわからないんですが?」
 「百聞は一見に如かず」
 いきなり諺を言うと俺の肩に手をポンと置いた。
 その瞬間、景色がぶれて…

 一瞬の後に俺は違う場所に居た。
 「こういうことができる奴だと思ってくれればいい」
 ………よくわからないけど。
 これは日常から出るチャンス……そう思った。


例の主人公君の登場です。
何回かに分けます。手の調子もよろしくないので。

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